サッカーにリベロというポジションがある(あった?)ことを知っていますか。
現代サッカーでは、ほとんど死語となっています。
いったいどのような役割を果たしたポジションなのかみてみましょう。
1. リベロはどうやって生まれたのか
サッカーの歴史を語るうえで、「リベロ」という言葉は大変重要な言葉です。
「リベロ」はイタリア語で「自由」を意味します。
「リベロ」の発祥は、マンツーマンディフェンスにおいて、特定のマークを持たない最終ラインの守備選手のことです。
ヨーロッパサッカーではマンツーマンディフェンスが主流の時代が長くありました。
マンツーマンディフェンスでは、マークする相手が基本的に決められているので、1対1の場面が多くなり、1対1の勝負で負けた時のカバーをする役割としておかれた守備のポジションです。
似た言葉、英語でスイーパー(掃除人)といわれるポジションとは似て非なるものです。
リベロは、守備ラインにおいて自由が与えられたポジションであり、マンツーマンシステムにおいて必要なポジションとして広まっていきました。
「リベロ」の役割を大きく変えた選手がドイツで「皇帝」と呼ばれたフランツ・ベッケンバウアーです。
ベッケンバウアーは、リベロという最終ラインより後方のポジションでありながら、敵陣への攻撃も積極的に見せた選手です。
守備の最後尾の選手でありながら「攻撃的リベロ」という、サッカーの常識を覆すような新たな役割を生み出したのです。
ベッケンバウアーの出現によって、「リベロ」の意味付けが変わっていったのが現状です。
ベッケンバウアーの功績として、1974年に開催されたドイツワールドカップにおいて、ヨハン・クライフ擁する、大会最強とされたオランダチームを決勝で破って優勝を成し遂げたことです。
2.リベロの誕生と衰退
ベッケンバウアーが「リベロ」というポジションから「攻撃的リベロ」を生み出すことができたのはどうしてでしょうか。
確かに、ディフェンスにおいて自由が与えられている「リベロ」ですが、一つ間違うと相手に得点を許してしまうことになります。
サッカーにおいて失点を防ぐことが、第一に優先されなければなりません。
当然、ディフェンスの能力が高いことは当然の資質となります。
「皇帝」と呼ばれたベッケンバウアーは、特別体格的に優れているわけでもなく、特別足が速いわけでもない選手でした。
ディフェンスの選手でありながら、泥臭いプレーはほとんどなく、とてもスマートなプレーぶりでした。
つまり、サッカーセンスの塊だということです。
周りの状況を整えるために的確に指示をしたり、危険を察知してピンチの芽を摘み取ったりする才能にあふれていた選手だったということです。
合わせて、攻撃の面においても、いつ攻撃参加をしたらよいか、をきちんと見極めてプレーすることもできました。
当然、ボールを扱うテクニックは相当のものであったのも当然のことです。
現代のサッカーにおいては、ゾーンディフェンスが主流となって、守備ラインの後ろにポジションを取る「リベロ」は、ほとんど見られなくなり「死語」となってしまいました。